2009/08/01

魯山人の枕流(ちんりゅう)

写真の魯山人作 箸枕(箸置き)は青山の骨董通りにある「田島美術店」さんからのお借り物。
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悲しいかな「おかだまくらりゅう」何て読まれたり「何なんだこれは」と意味を聞かれたりで、なかなか粋も洒落も伝わらないので、野暮な話『岡田枕流。企て1000年。』の意味・由来、そして意図を一挙解説しときますー。ゲゲゲ。自画自賛、傲慢、お馬鹿、身の程知らず、名前負け、と言われても由来だけは凄いっす。流石っす!

そもそも話は【漱石枕流(そうせきちんりゅう)】から始ります。中国西晋(せいしん)の孫楚(そんそ)は「石に枕し流れに漱(くちすすぐ)」と言うべきところを「石に漱ぎ流れに枕す」と言ってしまい、その誤りを指摘されると「石に漱ぐのは歯を磨くため、流れに枕するのは耳を洗うためだ」と言って無理くりごまかしたという故事で、へ理屈、偏屈者をある意味、賛美する洒落なのです。それが、みなさん多用される【流石(さすが)】の由来になったのです。「さすが!」のルーツですね。

その洒落に飛びついたのが造語と当て字、言葉遊びの洒落モン文豪 (本名)夏目金之助。その偏屈者を賛美するへそ曲がりのへそ曲がりの洒落っ気が大いに気に入り自身の筆名(ペンネーム)に即採用。【夏目漱石(なつめそうせき)】としたんであります。我々が漱石、漱石、と読んでいる呼んでいるのはある意味「流石(さすが)」「流石(さすが)」と言っている事なのです。「なつめさすが!」と。

そして、そんなイカしたネタを見逃すはずがありません。かの美食の偏屈王【北小路魯山人(きたおおじろさんじん)】は。黙っちゃいなかったんであります。時ちょうど、魯山人が鴨料理で名高いフランスのトゥール・ダルジャンを訪れた時の逸話、持参したわさび醤油で食したという武勇伝は誰もが知るところですが、その西洋料理視察の外遊から戻り、カトラリー(ナイフやフォーク)を休めるカトラリーレストにヒントを得て、それまで京料理の伝統には無かった箸枕(箸置き)を発案。自身の美食倶楽部「星ヶ岡茶寮」で箸休めの名脇役を作り上げたのが写真の「枕流」と記された箸枕(箸置き)なんでありまする。

ま。めぐりめぐってズーズーしくも品も格も幕下序二段くらいな鼻たれ小僧が、そんな遊びの極道さんたちに憧れて大胆にも使用させて頂いたのが【岡田枕流。(おかだちんりゅう)】ってワケです。くどいのが真骨頂の僕としては、それに加えて「企て1000年。」としたわけです。その意図は、そもそも建築を生業とする身としての心構え。6000年来のピラミッドに始まり、コロッセイム、万里の頂上、東大寺の大仏殿と、先人の都市造営、建造の足跡を知るに、まさに1000年後に残しうる思念と匠で建立される人類の文化を目の当たりにして、志を高く戒めとして自身を叱咤する標語、自是としたわけです。名前負け・位(くらい)負けする事なく極道を邁進する所存なり。ちゃんちゃん。なのでしたぁー。

《参照》
神戸の「アート飛田」さんには(お借りした写真上の)こんな逸品たちもありました。ご覧あれ。

《辻留》
そんな魯山人の美食の酔を今に伝える元赤坂「辻留」に、機会があれば季節の折りに足を運ばれると感嘆必至。京料理の本丸、京都「辻留」本店の3代目 辻一義さんは20にして北大路魯山人の元へ書生として弟子入り。普段の塩粥一杯から師匠のまなざしを学んだ魯山人亡き後、唯一の継承者。魯山人の器と味と遊びを召し上がれ。気取らず何気に店はあります。流石です。

 
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