2008/09/05

「ナイトプール」と「海中ホテル」

昨夜は久しぶりの熱帯夜。プールに飛び込みたい夜だから夏の終りに記しておこうか「ナイトプール」と「海中ホテル」。まずはもうすっかり定着しちゃったナイトプール。今年の旅行各社のサイトでは、どこもかしこも都内で屋外プールがあるホテルをいっせいに取り上げて、さながら「ナイトプール」キャンペーンの様相だったけれど。そもそも「ナイトプール」なんて何ともリゾートチックな魅惑的表現は、外資系5星軍団が揃い踏みした昨年、迎え撃つ元祖国産近代ホテルの雄「紀尾井町のホテルニューオータニ」が、その対抗策として客室の改修、回転レストランの再生、都内最古の屋外プールの価値再創造とシンボリックな3大整備の一大リニューアルを敢行した際に名称したプールサービスのキャッチフレーズだった。本館の客室は都内随一の緑園地帯を眺めるにふさわしい開放的な足元からのピクチャーウインドーに、創業時からのシンボルマークながらすっかり花やしき級に懐古感漂っていた屋上回転レストランはその場でこしらえて頂ける和洋中に鮨、揚げ物、鉄板焼きとスイーツを加えたシックなビュッフェ「THE SKY」に、そして古くから名庭園に屋外プールを持つ価値を生かして、熱帯のような東京の真夏に優雅な大人の水遊びを演出したサービスとネーミングを。これが都心で働く、それこそ外資な方々のアフターファイブにスマッシュヒット。一昔前なら退社後の屋上ビヤガーデンさながらに、プールサイドでビジネスウエアを脱ぎ捨てた男女が水着で裸でリカーもディナーもいただけちゃう、エキゾチックな東京の熱帯夜にうってつけな都心のクイックリゾートが誕生。何で今までこうではなかったのかが不思議なくらい東京の都心にふさわしい大人の夏夜の水遊びが密かに大流行しちゃったってところだろうか。まさに水際立ったブランディングの勝利。リニューアルの成功はあのトレンドリーダーな神田うのが自身の華燭の典会場として選んだ事が証明したしネ。


僕は離婚&恋愛貧乏でなければ生涯ホテル住まいをしたいほどの足掛け40年におよぶホテルマニア。だから当然、大概のホテルはその都度、相方を伴い使い心地を試してきたが、正直なところ鳴り物入りで登場した豪華絢爛な5つ星ホテルも新宿、渋谷、五反田のラブホテルも僕には等価にしか映らない。というのも、かつてバブル期のリゾートブームに登場したフォーシーズンズホテル東京椿山荘を除けば、新参外資5星軍団は、表向きにはここ10年来の国際化した金融、IT関連の新興成金ビジネスユースが背景にあるから破格な高額料金と異常な豪華施設を都内一等地に作りえるが、少々乱暴にいえば宿泊の実態は高額を支払えるニューエコノミーな成金族のラブアフェアーなラブホテル状態だからだ。試しに宿泊予約を入れようにも週末はもちろんの事、平日だってふたりの時間仕様な高額部屋から完売御礼。なかなか予約が取れない。外資&関連バブリーな会社の持ち部屋と国内外からの純粋観光客や単身ビジネストリップ族を除いて、誤解を恐れず過激にいえば新参外資5星軍団は白昼堂堂と高額払っての情事の城「目黒エンペラー」状態だなぁーと宿泊するたびに客と場の空気から感じてしまう。かくいう当方は相方ともども都心住まいながら超多忙で不規則な時間帯の仕事柄ゆえやむなくふたり時間を過ごすためには気分転換に便利と利用させて頂いてるのですがネ。おんなじかぁ?笑


ホテルというサービス産業界には古くからよきホテルの定説としてサイレントホテルという言い方があるが、正直なところこの感覚はあまり好みではない。集中した孤独な仕事でこもっても、ふたりだけの甘味なラブエスケープでこもっても、静かでプライバシーを守られた客室から一歩外に出ると様々な利用客の非日常の賑わいと選択肢豊富な飲食・サービスが適度にあるのが居心地いい。非日常という事では政界、財界、角界(相撲界)などなどの会合、パーティーなんてにしょっちゅう遭遇する環境で。それと最も重要なのが緩衝地帯。都心でありながら一歩外に出ると目にまぶしい都会の喧騒瞬く環境であっては正にラブホでエスケープな余韻が興ざめだ。と言うわけで、趣ある古参ホテルの帝国オークラニューオータニを比しても僕は断然ニューオータニ派なんであります。曰く因縁由緒正しき広大な日本庭園の中には"山茶花荘"なだ万本店や"清泉亭"に小池のほとりのこれぞ隠れ家、鉄板焼きの"石心亭"に"もみじ亭"等々と離れ感と風情ある佇まいが。その外延にはお堀と迎賓館、赤坂御用地、神宮外苑の緑地帯が広がり、視界には新宿御苑も遠く明治神宮の杜まで緑が続く。加えて言えば赤坂、四谷、神楽坂と周辺には大人の男女のさしつさされつな散策に良さ気なお店が多いしと。元来かぶく気質だけに今時のお若いガールズたちの「ラブホ」チックな「ラグホ」感に合致した繁華街の歓楽街の5つ星とは肌が合わない。多少古臭くても、世界の5つ星を渡り歩いたスマートなエリートスタッフがいなくても、絢爛豪華な最新施設じゃなくたって、海外からの超高級レストランがなくっても、時を積んだシミシワ日焼け面(ずら)の施設と代替わりをしながらのお得意様たちへの顧客サービスには新参が追いつけない風味と風格を感じてしまうからか。


思い起こせはホテルニューオータニとのご縁は古く、東京オリンピックに合わせて国策として開業した1964年の翌年、当時小4だった僕は家族とのお初な東京観光旅行で初めて宿泊した。もちろん人生初のホテル体験。そういえば飛行機にもこの旅で初めて乗ったし、部屋から初めて富士山を見た初づくしの鮮烈な思い出ばかりだ。時は高度経済成爆発期の日本。そのシンボルが新幹線と空の旅、名神高速と自家用車、丹下作品の現代的な五輪施設と近代ホテルニューオータニだった。以来、中3には高校受験で、大学時代はそれこそプールのシーズン会員パスなるサービス(期間中はロッカー、タオル、プールが自由に使える手ぶらでいける都心のプール)があって、アフタープールには夕日を浴びながら当時としては希有な南国風レストラン「トレーダーヴィックス」でこれまた生まれて初めてのトロピカルドリンクの代名詞マイタイやグアバジュースなんて飲んでたり、考えてみればこの歳までこのホテルとは本当に縁が深い。たぶん僕のホテル原風景なんだろうなぁー。これで妻子あれば間違いなく2代続けて利用客になっていただろうに。さてさて、ホテルニューオータニが1960年代後半の東京を象徴した建築だったことは1962年の第一作「007 ドクター・ノオ」から世界的大ブレークをしていたボンドシリーズ第5作目「007は二度死ぬ」(1967年)の舞台に日本が選ばれ、名神高速を疾走する歴史的名車、日本初のオープンエア・スポーツカー トヨタ2000GTとホテルニューオータニが悪の拠点施設として重要な背景役に登場した事が小6の少年には目を見張るカッコいい夢の新世界そのものだった。そう考えると今の子供たちに鮮烈に焼きつき憧れる夢のような国産建築って東京にいや日本にあるんだろうか?っといつものオカダ節@大声が吹き出しそうになるよ「カーサブルータス」の皆さぁーん。笑


007は二度死ぬ」(1967年)の前作が海中秘密基地と海中秘密兵器満載で何より海中での戦闘シーンが秀逸な「サンダーボール作戦」(1965年)だったが、それから44年、ついに来年(2009年)文字通り油水のごとくオイルマネー使い放題のドバイに"ハイドポリス"という「海中ホテル」が誕生する。世界最高峰のホテル通称アラビアンタワーだの動く超高層ビルだのと話題に事欠かない建築のデズニーランドに今度は「海中ホテル」だ。もはやドバイってハリウッドの映画セットが現実になっちゃう建築遊園地か。っとは言え総工費がたったの700億円!六本木ヒルズと同額だから考え物だ。ベガスのカジノ・ワールドとドバイのボンド・ワールド。そもそも砂漠ってエンターテイメントとアミューズメントな聖地なのかも。そして貧弱な肉体と頭脳で身の程知らずな僕は幾つになっても美女とホテルのプールサイドを夢見る永遠のボンド世代なんだろうなぁー。ナイトプールでグアバジュースとは情けないけれどネ。。。笑


Hydropolis Underwater Hotel, Dubai, United Arab Emirates

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