2008/12/31

ヤバイ・イヤー・エンド・イブ

カミサンがいる時期、またはGFとラブーな季節以外、僕の大晦日は1987年の番組開始から朝生(朝まで生テレビ/テレビ朝日)で年越し、その合間合間にCNNで世界の元旦ライブ中継を眺めて地球一周するのがお決まりだ。中でも1000年に一度の大世紀末(ミレミアム)2000年のCNNは、2つのワケで感慨深かった。ひとつは当然、1000年に一度だ。そんな節目にめぐり合うなんて、次は1000年後の3000年まで無いのだから。そして、もうひとつは、その数年前から僕は、相手かまわず、ところかまわず、機会あるたびに大世紀末の企てを熱く語り、うるさく吹きまくっていたからだった。その2000年企てを文化庁に持ち込み提案していたからなのだ。それは奈良の東大寺大仏殿で仏ファッションデザイナー、ジャンポール・ゴルチェが未来世紀に向けた日仏文化のコラボコレクションを発表するというもの。おまけは、ゴルチェがデザインしたスケルトン(半透明の)カラー・ミニ大仏がミレミアムの記念品、スーベニールとして世界に向けて発売されるという仕立て。ま、企ての結果はご承知の通り不発。そして2000年、CNNは世界で最初の初日の出をフィジーから始め、オペラハウスのライトアップとハーバーブリッジに上がる花火に沸くシドニーのカウントダウンを、中国ではレーザー光線が飛び交う万里の長城から、エジプトでは当時、出来立てのフォーシーズンズホテルから眺めるピラミッドの光のショー、パリではエッフェル塔の天辺から真横に弾ける驚きの花火のカウントダウン、そしてお馴染のニューヨークはタイムズスクエアのクリスタルボールと、2000年に沸く世界のお祭り騒ぎをライブ中継。世界はいづこも大統領まで登場しての国家を挙げた記念行事だった。ところで日本は?CNNライブのカメラは一体日本のどこを映したのか? 世界に放映された日本のミレミアムは、消灯した暗い渋谷の109前で「イェ~イ!」とVサインではしゃぐガールズ&ボーイズが少々。まるで高校生のしょぼいプリクラ集合写真の図だった。たしかにシブヤ109&シブヤガールズは日本らしいし東京らしい。しかし、世界は国を挙げて国民総出の一大イベント。国家を象徴する歴史を語る遺跡や建造物や自然を背景に光や花火や音の祭でお祝いなのだ。想像通りとはいえ国家も国民も不在が日本。それから8年、世界はとうに21世紀なのだが、どうやらやっと石油と富を独占する20世紀は終焉したようだ。自由主義の名の下に節度なく傲慢に謳歌した金融資本主義100年の瓦解、そのツケによる地球環境の崩壊。世界を覆った人類が直面した経済と地球の危機。まさに人類生存の危機。さぁー明日は「新地球主義」が夜明ける2009年。新年に沸く地球を一周するCNNのカメラは世界のどこを映し出すのだろう。年末駆け込み大量解雇で20万人が職を失い10万人が新たにホームレスと化した日本。本来なら救援物資の毛布や食料に、自衛隊による仮設テントに仮設風呂を設置すべき緊急事態。にもかかわらず、まるで緊急妊婦たらいまわしで死に追いやった医療体制同様、誰も助けない見殺し社会の日本だ。よもや初詣で賑わう明治神宮のお隣、代々木公園でのボランティアによる炊き出しキャンプ風景か?それともやっぱりそれでも「イェ~イ!」の109?おバカブームにねじれ国会、もういい加減にしないと、日本は新エネルギー産業では当に後進大国で外需も稼げない、アラフォー大国で人口激減の絶滅危惧種じゃ内需も稼げない、農産物も海産物もとっくの昔から自給なんてする気もない、どうしようもない地球の面汚し。やばいよ。世界の中のおバカキャラからイメチェンしなきゃ。大人にならなきゃ。みなさま。くれぐれも覚悟して良いお年をお迎えくだされ。日本は世界史に逆行したとんでもない大波乱の年明けとなりそうですからネー。

写真はお茶事の口取り菓子とは違う北海道の正月菓子「お口取り」。北海道では大晦日、年越し蕎麦にお節料理、そしてこの口取り菓子をいただくのがならわし。我が故郷の懐かしい視覚と味覚。写真の口取りは、嘉永四年(1851年)創業の小樽「花月堂」製。

2008/12/29

牝馬と女子

始まりはくしゃみ。あれれと鼻水。ティッシュが激減しだすころには咳咳咳。節々がだる~。あぁやっぱり。悪い予感は一気に悪寒。常日頃の無養生がたたり先々週はすっかり大風邪。久方ぶりの高熱で寝込む始末。仕事がかなりテンパッて、年が越せるかの緊張感ある営業戦の渦中だっただけに、すっかり気落ち。やむなくこれまた久方ぶりに布団に包まりっぱなし。お陰でスカパー三昧とはいえ、寝ても覚めても気も頭も体も鉛。そんな不快をスカッと晴らしてくれたのが牝馬と女子『夢翔る馬ドリーマー』。久方ぶりに涙、感動、涙、感動で、うるうるほろほろたじたじだった。2005年公開の原題は「DOREAMER」、実話との事だ。やっぱり「動物と子供にはかなわない」これ真実ネ。それにしても馬は美しい。馬体の艶。華奢な足の筋と腱。湯気上がる汗。馬蹄の旋律。駆ける雄姿。そのエレガントな躍動美にうなったのが『シービスケット』。こちらも実話だ。馬に夢を託す、生産者、馬主、騎手、獣医、かかわる家族たち。特殊な仕事ではあるが、普遍的な「生きる」をあらためて教わり、弱り目に祟り目の病床で鞭を入れられた。時、人類未体験の新世界大恐慌の序章期。正にお正月に観るには希望が沸く映画かもですよー。ついでに思い出した『モンタナの風に抱かれて』も揃えて、優美に夢翔る牝馬と女子3部作。迷える時代に、さ迷う人に、ぜひご賞味あれです♪ 但し、生涯思春期のポジティブがうざいとひねくれるハッピーエンドがお嫌いな、単純な事さえ小難しく不幸に描くかったるい単館系映画ファンには不向きでしょうがネ。来る2009年は、100年続いた世界の政治・経済が根底から塗り替えられる革命的創成期元年となりそうだからなおの事ですが(詳しくは31日にUP予)もう目先のストリートな旬を追いかける時代は終焉よ。100年、1000年、先まで途絶えることなく受け継がれる壮大な未来のファンタジーが語られ、描かれ、創られる節目~。等身大がリアル&ストリートがクール!なんて時代遅れを言いなさんな。カッコいいクール好きの皆々様々~!すっかり取り残されちゃいますよーーーダ。 時代の節目はいつも遠大な夢が語られ血が流れるんだから。ファンタジーを生きるアーティストの出番なんすよー。ちまちまこちょこちょゆるいが好きなんてネボケを言ってるやってる場合じゃないんスー。

"DREAMER" "THE HORSE WHISPERER" "SEABISCUIT" 戻る時間も帰る場所もなく人生は未知の未来に行きつくのみ。人生は幾つになってもいつの時代も永遠に夢中にしかないのだから。忘れたものを呼び覚ますお奨めの美しい馬3部作。

生きる事が賭けの連続。毎日が大博打のサバイブ人生53年。いつかJRAのCMみたく蒼井葵ような手垢にまみれた60年代も70年代も80年代も知らない天真爛漫無垢世代に、るんるんギャロップしながら優駿牝馬「オークス」を案内されて人生初競馬を楽しみたいものですわー。

夢翔る馬ドリーマー 2005年 DREAMER
家族で理屈ぬきに楽しめる夢のありか。子供に動物に大人が教わるいい教材。

シービスケット 2003年 SEABISCUIT
美しい疾走シーンは必見!どうやって撮ったのだろうか?鳥肌もんです!

モンタナの風に抱かれて 1998年 THE HORSE WHISPERER
原題の"ウィスパラー"がすべてを語る美しいモンタナと泥まみれのレンジローバーにかぶる計算された台詞の数々。この揶揄、比喩、落ちが見えない野暮天には、やはりひねくれ単館映画を見てもらうしかなしか。万人受けする宮崎あおいの純心さとは真逆に、後の、さ迷う大人の乙女「ロスト・イン・トランスレーション」2003、グラマー炸裂の熟れた女「マッチポイント」2005、に育つ直前のスカーレット・ヨハンソン(当時14才)は必見!都会の思春期のこましゃくれた天邪鬼には適役の80'sガールズね。

2008/12/24

天皇誕生日とキリスト誕生日

きのう23日は天皇誕生日。きょう24日はクリスマス・イブ(前夜)。あした25日はクリスマス。つまり、イエス・キリストの誕生日。古代の倭国には大王、天王、という称号があったようだが、天皇家の系図は天武天皇によって編纂された神話、伝説も含む「古事記」「日本書記」によれば、その始祖は天照大御神となるようだ。まぁ~諸説は学者に任せるとして、大雑把に言って、天皇という称号は紀元前660年に即位した神武天皇に始まり、現在の今上天皇(明仁陛下)まで125代、2668年続いている人類史上、唯一血統が明らかな家系。それは同時に日本国の歴史が約2670年であるという事でもある。一方、神が人としてお生まれになったとされるイエス・キリスト。こちらも詳細は学者に任せて乱暴に言えば、西暦2008年とは、キリスト生誕2008年。アバウト2670年と2008年。こんなに長きに渡って日本を律し、世界を律するとは、まさに神話だ。人類の平和に神が神話が必要である事は人の歴史が証明しているってことか。ともかく、祝い事は素直にハッピー・バースデー・トゥー・ユー♪で、連日の御目出度う御座いますですネ。

写真は昨年、イブにリブに贈ったオクリモンのオクリモノバカラのクリスタル・ルシアンツリー。高さ7センチの手の平サイズながら、ズッシリ重く、精度高く仕上げるのが一番難儀なコクのあるバカラレッドの一生モン。

つい先週、僕の身辺でもまさかの解雇者が出た。それも米&仏の2大学を2年前に卒業し5カ国語を操る24歳の才媛君だ。ワシントンの大学在学中にスイスのメガバンクからビジネスクラスのチケットが送られてきて、彼女はNYで世界最大級の金融大手に採用された。赴任地は一度も住んだ事がない東京を希望し、彼女は投資部門で2年間、世界の魑魅魍魎を相手に24時間フルタイムで働いた。100年に一度の世界同時高速恐慌の震源地とは言え、優秀な最年少者までの一網打尽解雇とは屋台骨まで瓦解したことの表れだろう。ついでに言えば100年前は、こんな経済ルールじゃなかったわけで、現ルール下では最初で最後の大不況というべきところだろうけど。1760年のイギリス産業革命から248年。1789年のフランス革命から219年。世界は産業と経済のあり方を資本主義に頼り、政治と統治のあり方を民主主義に頼った。その論理的後ろ盾は、古代ギリシャのアカデミーに、精神的道徳的規範はキリスト教に依拠して。そしてこの間、民主主義に反する富の偏りを共産主義で修正しようとした思想が東西の冷戦を生み、それは2度の世界大戦を挟み、一時は世界の6割を赤旗に染めた。旧ソ連、東欧、中国、ベトナム、今尚、37度線で休戦状態の南北朝鮮と。しかし、その旧ソ連も中国もあっけなく共産主義の誤算と運用の過ちからあざとく日和、あの革命戦で地獄と化したベトナムさえもが、あっつさりとドイモイ(民主化)。ついに1989年、冷戦の象徴だった鉄のカーテン、ベルリンの壁が自然崩壊。赤旗とともに地球を赤い血で染め上げた理想の実験は終焉した。唯一、笑うに笑えない不幸の残党、北朝鮮の金正日は残るものの。一方、資本主義世界は1986年、当時アメリカが抱えていた財政と貿易の双子の赤字による不安定なドルを安定化する為にプラザ合意を果たし、その後のIT革命で悪意のウィルスのごとく機械的に生産されていく最先端金融商品の金融資本主義を拡大、暴走させて行った。まるで「2001年宇宙の旅」のハルのように人が生み出したコンピューターの生きた知恵に人が振り回されていく。人の正体、モノリスとの遭遇だ。

1889年当時は醜い鉄塔と非難ごうごうでデビューしたエッフェル塔も、さすがおフランス。1989年の100周年には「マダム・エッフェル 100歳おめでとう!」とエスプリ効かせた懸垂幕がかけられて、すっかりパリのシンボル、世界のアイドル。

今にして思えば2008年は当初から世界の強欲ナルシストたちの賭博場で余震が起こっていたのだろう。原油の高騰、ハイブリット車の燃料化で一攫千金と沸いた食料(小麦、トウモロコシ)の高騰に始まり、 世界は一気に飢餓貧困と経済格差を爆発させた。そんな産業の世紀のツケ払いは、目指せ低酸素社会!を合言葉に地球温暖化対策で集結した洞爺湖環境サミットから、CO2大量放出大国、中国の北京オリンピクと、世界の話題は月ごとに気性のごとく地球を移動。そして9月、その雲行きは、とうとうニューヨーク・ダウ平均が9000ドル割れをしてからというもの、瞬く間にリーマン破綻、シティーの崩壊、アメリカの産業、経済、もっと言えば歴史のシンボル、フォード、クライスラー、ゼネラル・モータースらビック3を瀕死の淵へ突き落とした。その速度はさすがハル、急上昇の円高には世界一の健全堅牢企業トヨタをして、わずか数ヶ月で創業以来初めての巨額赤字で年の瀬大量解雇と相成った。くしくもT型フォードで始まった20世紀、アメリカの富の象徴フォード創業100周年の節目。何でも金融証券化しては、まるで何でも混ぜこぜで偽装食品を売りさばく悪徳商人のごとく金融至上主義の象徴、サブプライムのもろいメッキが剥がれてからは、株価暴落で市場からも銀行からも資金調達が出来ない袋小路。ついに世界の善良な人たちの、米国民の血税に慈悲を乞わざる得ない事態。世界は慌ててG8(8カ国首脳会議)を召集し、G7(主要7ヶ国財務相・中央銀行総裁会議)からG20へと知恵を頭数を拡大したところで、もはや旧大国もブリックスが束なっても、誰の手にも負えない予測も制御も不能なハル状態。そんな未曾有の危機アメリカに1776年の建国以来、初の黒人大統領、バラク・フセイン・オバマ・ジュニア 47才が誕生して、温暖化で氷河が高速で溶け出すように、世界の秩序はメルトダウン。 もはや完全機能不全。自由主義の名の下で節度と節操を見失った強欲金融資本主義はもろくも終焉。歴史の転換点クラッシュ2008と記されよう。

エッフェル塔とは逆に、生まれた時から戦後の近代化のシンボルとしてみんなに慕われた東京タワー。写真は天皇誕生日と重なる2008年12月23日、50歳を迎えた昭和33年生まれの東京タワー

地球誕生から46億年。生命誕生から40億年。人類誕生から400万年。イギリス産業革命から248年。フランス革命から219年。20世紀の産業、経済、富の象徴T型フォードデビューから100年。プラザ合意から22年。ベルリンの壁崩壊から19年。そして、IT革命から15年。人類はわずか200年で世界を小さく時間を短く地球を身近にした。しかしそれは考えてみるまでもなく、地球を俯瞰で眺めてみれば赤子でもわかる話だった。そもそも地球は、空にも、海にも、陸にも、線の引きようのない、それ自体が生きたまあるい惑星。あらゆる生命の営みの源、生きた自然環境であるだけなのだからだ。自国だけで隔離しては生存できない。自分だけでは生きられない。それは、日本だけを見ても、明治維新期に盲信して導入された、アテネからの理屈の系譜上産業革命後の産業と経済制度、資本主義。敗戦後に盲信されて施行運用してきた政治制度、民主主義。西洋かぶれの顛末は、風雅も風流も風情もなくした自己中、拝金主義の跋扈。心構えも景観も美しいを忘却し、人類史上類例のない、晩婚化、晩産化、少子化と全国均一の醜いタコ足配線都市化。いわば、雅な2670年の歴史に、到底折り合わない2008年を強引にかぶせてしまったツケ。本来ハレーションを引き起こす二重構造の破綻。世界は文化を知らない、たかだか232年の若造アメリカの傲慢な思い込みと仕組みを被せられた二重構造に振り回された。アメリカの坊やたちの金融危機から端を発した世界恐慌は、その短い歴史の授業料か。


アフリカで誕生した人類は、ヨーロッパ、ユーラシア、アジアと移動し、かの地の気候風土の中での生き抜く知恵として文化、文明を培った。しかし、老練な世界の旧大国は、グローバルスタンダードと称したMBAのマニュアル坊やたちの二重構造にすっかり振り回されたいた。世界史ガラガラポンの今、すっかり忘却してしまった自国のルーツを尊び、厚い歴史を継承し、同時に全人類共有の生存財産である地球環境を、先進国も急進国も後進国も、また人種や地域による差異も等しく、責任を分担しあい保護、管理する新秩序を創造する義務が問われる時代の幕開けだ。地球規模の生存ルールの元、全人類の未来に有益な産業と経済、利益の分配と統治の仕組みを、ITであらゆる価値的序列をボーダーフリーに遊泳する新世代が構築していく新地球主義が始まるんだろうなぁー。何が因果か、めぐり合わせか、2008年は「国際惑星地球年」とはネー。

未来は小さな地球の子供たちによって切り開かれる。ケンブリッジ大学と地元の子供たちとの共同実験。子供たちが作った宇宙服をまとった4体のテディー・ベアは大気圏外から宇宙遊泳を楽しみ、2時間9分の宇宙旅行から無事、地上に帰還。詳細はここから宇宙へ

例年どおりなら、メリー・クリスマス!というより、ハッピー・クリスマス!だったろう今日、世界中で日本でも大量ホームレス時代の不安な不穏な年の瀬になろうとは。そもそも原点に立ち返って、神が人としてお生まれになった日を厳かに慎ましやかにすごしましょうではありませぬか。世界の平和と未来の新秩序を願いながら神聖な一日として。みなさまには、ホーリーでハッピーな一夜が訪れますように。 Merry Christmas!

P.S.☆ 旧時代最後のホワイトハウスのクリスマスをノスタルジックに。
P.S.☆ 今宵こそ、ジョン・レノンの不朽のクリスマスを聴かずしてはネ!
☆☆☆Happy X' mas ☆☆☆ (War Is Over) - John Lennon

2008/12/10

タワシタとカナユニ

1964年の東京オリンピック、僕は小学4年生だった。10月10日の開会式当日、学校は半ドン。集団下校して、家の白黒テレビの前に家族は集まった。翌1965年、僕は生まれて初めて飛行機に乗り、生まれて初めて洋式トイレのあるホテルというところに泊まった。赤い鶴のマークの「日本航空」と東京オリンピックの為に、ほぼ国策として建設された日本初の近代ホテル「ホテル・ニューオータニ」。そのホテルは1967年、007シリーズ第5作「ジェームス・ボンドは2度死ぬ」で悪の根城として世界デビュー。それから10年。高度経済成長を謳歌した1977年には、推理小説作家 森村誠一のベストセラー「人間の証明」の映画化で事件の鍵となる重要な舞台となって日本中が知る所となっていた。この「人間の証明」は人気作家の原作を映画化したという事よりも、二代目角川春樹が先代から角川書店を引き継ぐと同時に立ち上げた角川映画によって制作された事の方が怪訝にスキャンダラスに報じられていた。というのも当時一介の中規模出版社が映画制作会社を起こす何て、誰一人想像だにしない異例の事件。だから映画は否が応でも知名度を上げ、角川春樹の名は、時代の異端児として話題をさらった。しかもその話題作りはさらに巧妙で、時の俳優 松田優作を主役に迎え、本と主題歌の出版と映画の公開を同時に広告宣伝するという前代未聞の画期的な戦略が大当たり。それは確信犯角川春樹が既存の、映画、出版、音楽、広告、芸能、放送、各界へ放った奇襲攻撃。今で言えば、コラボ、タイアップ、メディアミックスの先駆けとして、業界に経済界に横断的プロデュース革命の証明をもたらした。さらに映画にも出演したジョー山中が歌った主題歌は50万枚を超える空前のヒットを飛ばし、劇中ジョー中山の台詞でもあった「母さん、僕のあの帽子どうしたでしょうね ええ、夏、碓氷峠から霧積へ行くみちで 渓谷へ落としたあの麦藁帽ですよ...」 は、本の、映画の、CMで耳にし、広告で目にし、ジョー中山が歌うその台詞を、多くの人が口ずさんだ。そんな社会現象を巻き起こした角川ビジネスは、まだカラオケも流行語大賞も生まれるはるか以前の1977年、日本が高度経済成長期を終え、新たな潜在需要を掘り起こす時代の幕開けとして鮮烈に記憶されている。


考えてみれば、ハードボイルドをポピュラーにした「ジェームス・ボンド」、日本の現代推理小説の草分け「人間の証明」、ホテルとバーとは、甘い香りの葉巻にいぶされ、しみる強酒にいやされる、そんな男に立ち振る舞まわせる男子が唯一エスケープできるファンタジーなのかもしれない。ま、政治力はともかく、麻生総理のホテルで葉巻。許されますって。だもの、文士たちが著書に記した店や味に読者が魅了されるのも納得か。池波正太郎は粋なグルメの神様だし、没後は書生だった佐藤隆介に神は引き継がれたし。そもそも、レイモンド・チャンドラーへミングウェイ、日本なら開高健、1980年代を代表するハードボイルド作家 北方謙三と、旅酒愛犬と車、そして美食と美女って、寡黙で群れない男の嗜み?下戸で多弁な僕としてはおよそ不釣合いな世界なんだろうけど。しかし、父がくだんのホテルを建設したゼネコン勤務だったせいで、実は子供のころから鮨屋にクラブにと、どこへ行ってもオーさん!オーさん!と呼ばれてはサインひとつで父の付け払いだった身。というのも、大手ゼネコンの土木といえば、まさに政治家がお役人が営業相手。土木は国費を費やす分野、選挙もからみ贈収賄問題の巣窟だったわけで。日々接待の行き先は、料亭、名店、ホテルのバーにレストラン、そして銀座のクラブだ。時は高度経済成長のど真ん中。いつ逮捕されてもおかしくない巨額が蠢く贈収賄があたり前の時代。寡黙で無骨で家族サービスなんて不慣れな企業戦士の父は、たまの休日となれば、何も考えずに事足りる行きつけのホテルや料理屋に家族を連れて行っては振舞った。およそ文士の食道楽とはかけ離れてはいたけれど、お陰さまで、小生意気にもそんな場に慣れ親しんで大人になってしまっては、社会人として自立してからも身分不相応ながらこなれたもんでホテルを上手に使い、大人の名店に若造は通っていたわけだ。ところがおかしな事に、40も終りの50真際に出会ったEXGFのリブ様のお陰で、ファミレスもファーストフード店も行くようになって、変な話、今度は逆に、子供たちが遊ぶ店が物珍しく、また面白くヘビーユーザー。それもこれも、慌しく働くエンタメ業界の女社長リブ様には高校生になる一人娘がいたからなんだろうけれど。そんな、もはや自分の子供のような世代と仕事をする年代になって久しいが、TGPAIR(東京ガールズプロジェクト)&(アーティスト・イン・レジデンス)の忘年会を来る20日に催すかと思案を始めて、思い出したのが、今日のお題「タワシタ」と「カナユニ」だ。いつもながら前説が長すぎる野暮で失敬。


創業1966年、語り継がれる伝説満点の「カナユニ」赤坂と三田のお香が誘う食蔵「アダン」。

さて、東京はオールド文士もニュー文士も、いわゆる文化人系職業人が多数生息しているので、良くも悪くも一見さんお断り「紹介者がなきゃダメ店」がかなりある。ま。そんな事いわずとも、 店主の藤村俊二さん自らとっても気さで居心地の良いお店とは言え、お値段が100万円級のワインリストも並ぶワインバー「O'hyoi's」では、必然的にお連れ様も含めて財布の中身を気にせず遊べる芸能人が多く集うことになって、自然と住み分けはなされるんですがね。また家の近所でも、キラー通り沿いにあるデニー愛川さんのここぞバー「HOWL」は、悦楽放蕩気取りのハードボイルドな男子の社交場。オーナーが年月かけて育んだ国産リキュール「星子」の名店。そんなロマンが暖かいノーブルな闇に仕上げているんですが、何せ紹介者と行かねば入店は出来ずでゴメン。神楽坂で現役の芸者として鳴らす千佳さんのワインバー「Chika」は、黒塀界隈の横丁に佇む侘びた古民家の外観とは裏腹に、店内は妖しい赤の世界。その色気と葡萄酒にはディープに酔わされますわ。大人の逢瀬にうってつけ。年季が入るとは、店の空気も味が染み艶めくのかを堪能できるは元赤坂のレストラン「カナユニ」。店の創業期1966年、三島由紀夫も夜会のあとにはオニオングラタンスープにぞっこんだったと記している伝説満点店。しかもレストランではあるけれど毎夜、シャンソンやジャズの生演奏が入り、名実共に大人の夜遊びお夜食にはこの上ない食処。界隈は鹿島建設、サントリーの本社が並び、かの魯山人最後の弟子 辻義一 さんの懐石料理「辻留」も何気に店を構える。そして、何やらカウンターの入り口から一番近い席が松田優作。二番目が三島由紀夫。三番目が石原裕次郎岡本太郎は何番目だったか?と、各時代の皆さんには指定席があったそうな、宴席はそんな前菜話からすっかりくつろぎの晩餐が始まりまるってわけだ。三田の「アダン」も敷居は低いが微妙に不便な立地が広告系文化人には人気のリトリート。かつて芸能人や文化人が競って住まった高層セレブマンションのはしり三田ハウスの裏手に位置し、今も往時の残り香が漂う中途半端な近レトロがまた美味しい。ついでに添えれば、この通り沿いにある車の町工場は必見。誰が所有?何処から来たの?と、ビンテージな名車ばかりが入院中で時を忘れて見ほれてしまう。お題のタワシタ」は店名を裏切ることなく、文字通り東京タワーの真下。驚異の至近距離から東京タワーを仰ぎ見上げるフレッシュなアングルに感動もん店。業界屈指の売れっ子作家小山薫堂氏プロディースで放送、芸能界の方々には絶大な人気。看板もサインも何もなく、住所も電話番号も非公開ながら、東京で一番わかりやすい店であるのもオツなトコロだ。窓際席が取れて、運良くタワーが灯るトワイライトな時に、タワーが消されるミッドナイトな時に居合わせれば手品のごとくちょっとしたイリュージョンに宴席もときめく。それにしても、店主の人気とリンクして、いつも美味しく賑わう業界屈指のダイニン グ~で、そのまた階下には、ご紹介なしでは入れないスノッブなワインバー「ゾロ」が。おまけに、腹も心も至福で満たして店を出ると、朱色のタワーに止めを刺され、愉快な夜に感嘆することうけあいであります。なぁ~んて解説してたら肝心の予約全滅!そりゃそうだよ。クリスマスホリデーの渦中じゃね。さてさてはてはて、どこにしようか忘年会場。。。みなさま妙案はありませぬか?

ここは業界らしくラグジュアリーでノーブル(らぐの)な旅・味・宿を語らせたら天下逸品の寺田直子さんのブログをどうぞお召し上がりくだされ。

《以下、本日のメニュー》

ワインバーO'hyoi's
気さくです。居心地よいです。でもお財布は大き目を。
東京都港区南青山4-1-1 アルテカベルテプラザ地下1階
03.5410.0412
ここぞバーHOWL
住所・電話番号は非公開。でもお店はすぐわかります。
ビクターがあるキラー通り沿いに面してますから。
ワインバー「Chika
黒塀横丁を彷徨うこと必至。見つけニクイが神楽坂。
東京都新宿区神楽坂4-5
03.3260.6353
レストラン「カナユニ
どの年代のお供とも安心して楽しめるは店の余裕。
東京都港区元赤坂1-1 中井ビル地下1階
03.3404.4776
蔵入りアダン
お香の香りに導かれると辿れます。
東京都港区三田5-9-15
03.5444.4507
レストランタワシタ
住所・電話番号は非公開。
しかも看板もサインも一切ありませんが、
お店は店名どおりですぐわかります。
東京タワーの本当に真下。足元ですから。
東京都港区東麻布1-9-3(事務所ビルの2階)
ワインバー「ZORRO
「タワシタ」同様、住所・電話番号は非公開。
しかも看板もサインも一切ありませんが、
東京タワーの本当に真下。足元ですからね。
東京都港区東麻布1-9-3(事務所ビルの1階)

P.S.100年に一度の世界的不況感ただよう年末とはいえ、街は忘年真っ盛りですネ。

 
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