2009/09/22

ゴッフォの手紙。オバマの演説。国連のハトヤマ。

西洋を模して導入された政治制度を施行して120年。日本で初めて起こった今回の政権交代の引き金ともなった選挙のスローガンが脱官僚政治。国民がNO!を突きつけたのは125年も続いた官僚支配だ。しかしその官僚支配の起源が、幕末、西洋文化の吸収と模倣こそが新しい国作りの美旗と、開国・倒幕に気負った薩摩藩勇士たちによって19世紀末のパリ万博に3度も名刺代わりに出品した日本の文化営業だったとは皮肉な話。日本の西洋かぶれ「舶来信仰」はここから今なお連綿と続いてきたわけだ。しかも当の西洋の、中でもハイソなインテリが集ったパリでは、かつて、より遠くのまだ未知の地を目指した略奪侵略の大航海時代には、ついに行き着けなかった謎の極東の離れ小島日本は、マルコ・ポーロが記した略奪旅のうわさ話、見果てぬ謎の「黄金の国ジパング」と夢想されていたのだから。そんなエキゾチックジャパンが自ら出向き突然の西洋デビューには、パリの西洋のインテリたちは目から鱗、腰を抜かし、薩摩藩士の思惑とは裏腹にパリでは日本文化が大ブレーク「ジャポニズム」が大流行だ。それもそのはず西洋は、富の戦利の権力の象徴として、足して足して足しまくる略奪の果ての豪華絢爛な足し算のデコラティブ。方や日本は、そんな栄華の極みを誇示する装飾過剰なパッチワーク文化とは対極に、自然界の理にかない無駄を省く合理な質実剛健。引いて引いて引きまくる謙虚な引き算のミニマリズム。彼らはそんな四季折々の自然から会得したミニマルな形状を生む「匠」と、色彩の「雅」が織りなす「芸」と「技」にカルチャーショックだ。まるで今の「東京カワイイ」のようにジャパンオタクと化して浮世絵、陶磁器、漆工芸、などなどをむさぼり買いあさり日本に熱狂。そんなジャポンオタクたちのジャポニズム(日本美から学んだ日本趣味)のニックネームが「印象派」。そしてその旗手、究極の日本オタクこそ、晩年、日本の風景に近いとアルルに移住し日本庭園までしつらえたフィンセント・ファン・ゴッホだった。ゴッフォは唯一の理解者で彼のアートディーラーでもあった弟テオに日々の胸中を手紙にしたためたことはつとに有名だが、その手紙集に彼が日本文化の真髄を知り得た事を表す興味深い、こんなくだりがあるのです。


以下、ゴッフォが1888年9月24日付けで弟のテオドルス・フォン・ゴッフォに宛てた手紙のくだり。(著作翻訳:三浦篤「ゴッフォの手紙」より)

『日本美術を研究すると、間違いなく賢者であり、哲学者であり、知的な人物に出会うが、その人は何をして時を過ごしているのだろうか。(中略)彼はただ一本の草の芽を研究しているのだ。しかし、この草の芽が彼にあらゆる植物を、ついで四季を、風景の大いなる景観を、最期に動物、そして人物を描かせることになる。(中略)さあ、まるで自分自身が花であるかのように自然の中に生きる、こんな単純なこれらの日本人が教えてくれるものこそ、ほとんど真の宗教ではなかろうか。』

そもそも西の言葉「カルチャー/ culture」(文化)とは、その語源が「カルチベート/ cultivate」(耕す)で、そのまた語源は「カルト/ cult」(祭る)と、英語の語源、西の言葉の起源、ラテン語にはそう記されている。つまり、文化とは農業。「アグリカルチャー/ agriculture」と言われるとおりだ。生命の進化の過程で人類だけが持ちえたカルチャー(文化)とは、まさしく生き抜くために必然的に培われてきた食文化体系を指す。か弱き人は、集団で生活(社会)を必要とし、その集団生活(社会)を養うために、肥沃な土地での定住農耕から始まった。そう、あの四大河文明。ナイル川、チグリス&ユーフラティス川、インダス川、黄河の。だから、カルチャー(文化)の言葉の起源が示すとおり、天恵の地をカルチベート(耕す)し、来年も豊作でありますように、洪水や日照りなど天災に見舞われませんようにと、人の力を超えた、人の希望など聞かない大自然に畏敬の念を抱き、五穀豊穣を願い、天をカルト(祭る)してきたわけだ。文化とは定住したその地の自然環境、気候風土が、そこでの生き抜く知恵を人に教えた産物だ。人類は集団生活に必要な大量な食料を大河が恵む肥沃な土地に定住して、貯蔵保存の利く穀物を生産する農耕生活の中から、自然と集団との付き合い方を学び、様々な儀式としきたり、政治と祭事、その用具や約束、生活道具をあみだし、祭・食・住・衣と暮らしの方を培った。その過程で、味覚の創造と美意識を洗練させてきたわけで、文化とはその生活様式総体を指すわけだ。ポリネシアン、モンゴリアン、インディアン、等等、人が集団で平和に暮らす為の知恵を畏敬の自然界から学び、その統治の生活の規範を踊りで歌で祭りで伝承してきた。いわば宇宙(大自然)の「摂理」から「憲法」を、農耕定住に適したその地の気候風土から「節度」「法律」を、生き抜く知恵として見いだした。自然の恵み山海の幸に畏敬と感謝をカルト(祭り)する「謙虚」を知り、土に始り土に返る自然循環する自然と「調和」の生を学び営んだ。

ところが、狩猟略奪移動の民たち西洋文化の支柱はギリシャのアテネで開かれた学問と言う名の論理ゲーム「アカデミー」から始る。傲慢にも頭で紡いだ「憲法」と「法律」ゲームのルール。西洋の真のインテリたちは日本文化に直面して、真のルールがゲームで遊ばれる「アカデミー」にあらず、人の手を超えた大宇宙、自然界のルールで律せられていると、初めて自然界の「摂理」から「謙虚」さと「節度」ある「調和」を知ることとなったワケだ。その証左こそ『真の宗教ではなかろうか』と、ゴッフォに言わしめたカルチャーの起源 カルト(祭る)だった。リーマン破綻から1年を期に先日、ウォール街でオバマ大統領は『節度も節操もなく暴走したMBAを信仰した金融工学の果てにアメリカ経済を破綻させ、世界経済を揺るがした「傲慢な懲りない強欲たちが」もうすでに復活跋扈している』と警告をならす演説をしていたが、自然界から生きる糧を恵みを受けない狩猟略奪移動の民には、自然への「畏敬」「謙虚」などは毛頭だ必要もなく、彼らの生きる糧は理屈遊び「アカデミー」がお墨付けする「高等な詐欺」として正統化されるのも致し方なしなのだ。

美術を志した者なら周知の通り、色を表す言葉が一番多い人種、国は日本だ。それは縄文時代に定住のキッカケともなった豊かな森林にある。あまり知られていないのだが日本は世界一樹木の種類が多い国土。実に三分の二を覆う豊かな森林資源を有する。その四季折々に実る森の恵みから定住が始まり、その広葉樹から針葉樹までの多種多彩な森を彩る文字通り樹木の、若葉の萌黄、深緑、紅葉、そして落葉、枯葉にいたる微妙な季節感から繊細な色彩感を育んだ。やがて、南北に細長く徒然なる四季の移ろう海と山が隣接した平地の乏しい土地での稲作を通じて自然から学んだ生存の知恵、生き抜くDNAは、小津安二郎のひと雫の水滴に写る世界じゃないが「ミクロコスモス」、小さな自然から大きな宇宙を愛でる文化に進化する。「桶」と「盆栽」ミニマルとフィギア「かわいい緻密」を生み出すわけだ。ゴッフォが日本文化と遭遇し学んだ真理、日本文化の真髄とは「一介の草が宇宙を思惟」するという足元にあった。まるでパスカルの「考える葦」のように。

昨夜渡米した新政権の鳩山総理は国連総会で来る25日、世界に先駆けて25%のCO2削減宣言をするらしい。そもそもCO2など排出しない自然循環型の文化を育んだエコ先進国が日本。体にやさしい食文化。地球にやさしい住文化。いつの時代も世界が好奇に求める日本文化は、この地の気候風土が生み出した地球上どこにもない人類文化のガラパゴス。西洋の模倣の果てに脱官僚政治を標榜する新総理には、3000年来の日本文化を代表して西洋の理屈コストカットだけではない、文化こそ究極の経営資源を心得て外交デビューを果たしていただきたいと切に願う。そもそも、この宇宙の地球の海も空も陸地も誰の者でもないのだから。傲慢な狩猟略奪の紛争文化、西洋の覇権利権主義にあらず。あらゆる生命の営みに必要な共有財産なのだから。そして、国内で言えば宮崎県知事の活動のように、世界でも各国固有の文化こそ営業すべき経営資源なのだから。かつて19世紀末、憂国した薩摩藩士による日本の西洋デビューに端を発して20世紀初頭、謙虚な引き算モダニズムが生まれ世界を席巻した。その旗手コルビジェがスーパーバイザーとなって往時のモダニスト建築家集団によって国連ビルは建てられた。そして21世紀初頭の今、故丹下謙三の門下生 槙文彦が新国連ビルの設計をまかされた。殿下の宝刀「元祖自然循環型社会」の日本は、今再び日本文化の最先端環境技術を国策として無償で提供してでも国連営業をすべき好機到来だ。太陽光エネルギー、燃料電池、ロボット、ガラス、精密機器、様々な日本の新技術をちりばめた先進の国連ビルの建設のために。それこそ日本の経営資源「日本文化」の究極のショールームと化して未来の日本産業が世界に貢献し世界市場で発展させる唯一最速の道。老人をなだめすかす姑息で内向きな税金の無駄使い狩りだけにと止まらず、税金を湯水のごとく世界の未来に投資する時。日本のリーダーによる国連での演説と日本の英知による国連ビルの設計こそ、21世紀の日本文化の広告塔。世界営業のシンボル。日本のブランディングだ。

僕はメディアに叩かれ若い国民にさえ総スカンをくらい結果、民主党を勝たせるかっこうの標的となった「アニメの殿堂」こそ、日本の未来を救う唯一の国策だと考える。100億なんてケチを言わず1000億をかけるべき日本の文化営業のシンボルだと考える。年間の維持運営費が100億の規模なのだ。お台場なんて姑息なレジャースポット思考を排して、博覧会のコマ割りブースのようにチープな表参道ヒルズを解体して、都心のリアルストリートに燦然と建つ日本の建築最前線を建立する国家的プロジェクトだと。高速道路無料化や子育て支援に税金をばらまく愚作をやめて、太陽光エネルギーを始めとした最先端技術「文明」と鳥獣戯画に始る日本の源氏絵、浮世絵、マンガ、アニメの最前線「文化」に関わるあらゆる企業、才能が結集して取り組むべき、世界の日本の未来に投資すべき国策だと。文化産業を咲かせなければ、未来に遺跡は残せない。世界で一番「世界遺産」が大好きな国民なのに、世界の人類の日本の未来1000年後に残しうる遺跡を創造するという思考が欠如した悪しき西洋化、舶来信仰で、自らの存在意義アイデンティティを喪失した不幸な100年から脱する時。1年を通じて月を愛でるためにだけにしつらえた桂離宮の斬新なモダニズム。1300年来の東大寺。未来の遺跡建造こそ、そこに投入される「技術」と「芸術」こそ、未来永劫に潤う経営資源。先人の生き様3000年来の歴史を知るに、コストカットで文化を未来を創造できない貧相な日本ではないはずだ。もうとっくに、日本の家電、日本の自動車、日本のガラス、日本の土木、日本の水着、日本のマンガ、日本のアニメは地球の隅々まで行き渡り、日本の映画、日本の野球さえ、とうの昔に本家を追い越し、そしていよいよ20世紀の紛争の火種「石油」も「原子力」も使わない「太陽光発電」の21世紀。電気自動車、燃料電池、自然エネルギーが自己完結する住宅・オフィス・建築、人を支えるロボット、健康和食にカワイイカルチャー。元祖エコロジカルでヘルシーな人にやさしい地球にやさしい『MIJ」が未来を開くって時代なのだ。理にかない「精緻で緻密」「雅でかわいい」技術と芸術『MIJ』が、東西問題なきあと20世紀の積み残し最後の課題、南北格差と低炭素社会を解決する地球平和の勝ち残った人類生存のDNAなんだけどネーみなさん!どう思います。

東京のど真ん中、表参道にしつらえた「小さな大宇宙」プラダビル。まるでイサム・ノグチの灯りを建築にしたような間合いと風情ある佇まい。日本文化の真骨頂をスイス人建築家にしてやられた不甲斐ない日本の現状だ。付け加えれば、アメリカの文化、映画産業ハリウッドのアニメの殿堂「ウォルト・ディズニーの本社ビル」は故 丹下謙三の門下生 磯崎新の建築だ。MIJがミッキーを象った。

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