70歳の誕生記念に出版されたトミー・アンゲラーの「EROTOSCOPE」は、420ページとボリューム満点。400点を超すブラックエロスがまた渋い。それにしてもアンゲラーって方はお見事だ。著名な子供向け絵本作家と、人気大人向けエロティックイラストレーターと、真逆なふたつの作品世界が両面ヒットする希有な作家だ。絵本ファンには、彼のエロスは仰天だろうし、エロスファンにも、彼の絵本は意外だろうし、聖と俗を軽妙にあやつる大人芸は見習いたい。彼は人生を美味しくいただける天性のグルマンなんだろうなー。おこがましいけど、僕もこんな洒落た本が出せる70歳のエロジジイになりたいものだ。運が良ければ、まだ20年も時間はあるからネ。師松井の足元にでも近づければ。
「EROTOSCOPE」Tomi Ungerer TASCHEN 8,400yen
一昨年、84歳で亡くなった米作家ノーマン・メイラーを知らない人はいないだろうが、アポロ11号による人類初の月面着陸から40周年に企画された「Moon Fire」は、彼の言葉あって成り立つノンフィクションのファンタジー、正にアメリカの時代を語れるアメリカの言葉と写真が伝える超豪華な記念本だった。彼の的確な言葉力でノンフィクションの傑作と成りえたTIME誌の「月」特集号(The Moon)。後日リライトされて書籍化された「月にともる火」(Of a Fire on the Moon)。彼ほどアポロ11号の月面着陸について、歴史的にも、科学的にも、文学的にも、言葉を尽くせる運命的なアメリカ人はいない。そんな適役の表現と美味しくからむNASAやTIMEから蔵出しされた本邦お初の写真。開けど開けど目を見張るドキュメントは荘厳なファンタジーの連続だ。若いアメリカの健全な野心がもたらした人類史のこの一瞬。バカみたい壮大な実験はそれ自体、いやそれこそ、未来の遺跡発見のように目が眩む荘厳なことであることを教えられる。
☆しかしアンゲラーしかりメイラーしかり、70〜80〜のお爺ちゃんたちのエロスとムーンは洒落ている。ノーマン・メイラー様なんて84年の生涯に、6回も結婚して、9人の子供がいるそうな。たかが3回の結婚に子供0じゃ〜到底足元にも追いつけない未だ小便臭い鼻たれ小僧か。そして最晩年にいたっても、アメリカの現代建築を「恥辱」「大失敗」と酷評し続け「米国はこの25年でとても醜くなった」と叱咤していた彼の鋭い物言いは、遺言のように記憶に残った。彼らのような愉快な老獪になりたいものです。最期まで熱い情熱と乾いた毒と色気立つ。シャネルのエゴイストを香らせて。精進精進。。。
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