現代美術に詳しい人ならご存知だろうが、ドイツの古都カッセルという人口19万の地方都市で、1955年(私が生まれた昭和30年)から5年おきに「ドクメンタ」という現代美術の大型グループ展が開催されてきた。元祖村おこしのようなこの美術展は、毎回明快なテーマの元、世界中から最前線のアーティストが200名ほど招聘されて、町中の老若男女が参加しては町中が展覧会場となる希有な国際美術展。田舎町の出来事が、ベネチア・ビエンナーレに匹敵する世界の現代美術界の思潮に多大な影響を与える、まさにドキュメント。僕は北海道文化放送の開局30周年記念特別番組の企画で、『日比野克彦のパリ(仏)ヴェネチア(伊)カッセル(独)3都をめぐるサルでもわかる現代美術』を企画し、その下見にカッセルへ行ったことがある。たまたま4年に1度のビエンナーレと5年に1度のドクメンタが重なった年の企画で、贅沢にもパリでウォーミングアップし、ベネチア、そしてカッセルで、現代美術三昧をするというもの。日比野氏が美大生を引き連れて、現地野外学習するという仕立てだった。
そして後日、知ることになったフランスの田舎町がスゴいんです。ワインの名産地ボルドーから100マイルぐらいパリ寄り、そのパリからTCV(仏新幹線)で3時間ほどのアングレーム市は、カッセルよりもはるかに小さい人口49000人の、のどかな農村。ここで1974年(昭和49年私は19歳)から毎年、ヨーロッパ最大の国際漫画フェスティバルが開催されていたのですわ。今年で35回も。独カッセル同様、街をあげてのイベントで「漫画界のカンヌ」と呼ばれている「アングレーム国際漫画祭」は、毎年30万人も集客するというから東京の本家コミケ級。だから黎明期には、かの手塚治虫氏も自費で参加していたとかの逸話も伝説も満載だ。2007年にはマンガ家水木しげる氏が『のんのんばあとオレ』で最優秀コミック賞を受賞している。
そして2009年6月20日、つい先頃オープンした米サンフランシスコのJPOPカルチャーの殿堂「New People」と、今年の話題を二分する、仏国営「漫画博物館」(パンド・デシネ博物館 // le musée de la bande dessinée)が開館した。4500平方メートルの敷地に収められた漫画が5万冊、うち日本の漫画は1万5000冊。アニメなどの原画8000点の規模。世界的に見てもマンガ文化を総合的に取り扱う博物館は希有。出版と製紙業の中心であった事につなげて、世界有数のバンド・デシネ、コミックス、マンガ文化大国であるフランスの国営拠点が羨ましい。なんせ漫画の本家は「アニメの殿堂」と、国家、国民が、自らを蔑み、悪しき税金のムダ使いのハコもの扱い。この民度の低さ、文化度のお粗末さには、ほとほと呆れてしまうのは僕だけだろうか?諸君!どう思います?世界の宝画、世界文化遺産をバカにする自分自身を。日本人を。マスメディア、有識者、政治家を。
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