MY DEAR, by Frederique Morrell
Cushion,by Frederique Morrell
代官山の西郷山公園を下ると右手にある古道具屋のような、沢田研二と名乗る店長がいる家具屋がイカしていて、名前通り悪ふざけがそのまま拾ってきた家具をマッドにリメイクしていて、それはそれはクール。例えば、捨ててあったグレーのスティール製事務机の、どう見ても部長以上級サイズ(零細中小企業の社長用か)をグラインダーで渦巻き状にキズを付けると、そこだけ削り出しの真新しい渦巻き柄となるが、全身これで纏われちゃー、ワイルドでデカダンスなアートデスクの一丁あり〜。手な具合。これに天上から豪奢なシャンデリアとくれば、もう完璧な作品空間だ。名刺が見つからずURLが紹介できないのが残念。
フレデリック・モレルは、そんな野趣な前衛とは一線を画す、奇麗な作り丁寧な仕事の新作なのだが、元は同様にリメイク、リサイクル、リプロダクツ。ノーブルな女性趣味が新鮮だ。パッチワークなんて手仕事は、そもそもリメイク、古くなった傷んだモノの修理、再利用だったはずが、それを意図的にクラシカルなデッドストックのゴブラン織りファブリックをふんだんにパッチワークで継ぎ接ぎしていくと誕生したのが、写真のシリーズ。テーブルクロス、ランチョンマット、トレイ、クッション、スツール、ソファ、そして立体オブジェにいたると、もう手作りのリサイクルプロダクツを越えてアートワーク。上質なビンテージファブリックスを贅沢に使った「ゴブラン織りのスカルプチャー」立派なアート作品だ。
そもそも、彼女がこの作風を確立したきっかけが素敵だ。祖母が亡くなった時、祖母のこれまでやってきた膨大なニードルワーク(針仕事)が、結局ゴミ屑となってしまう事を惜しみ、祖母の遺産、編み物、縫い物、継ぎ接ぎ物を残すために今風にアレンジしたリメイクを発案したという。以後、ゴミとして捨てられてしまう大量生産のデットストック、古着、使い古しの生地に新しい価値を縫い合わせては、有効再利用する現在の作品スタイルが確立した。本来の価値をなくした遺物達をウィットにとんだコンセプトでリサイクルってわけだ。近作は、ほとんどがビンテージのタピストリーをニードルポイントでコラージュしてきたが、さらに継ぎ接ぎを加え始めたのは、ビンテージレースや、昔の広告生地であったりと、コラージュの柄とデザインにバリエーションが増えた。無機質な空間にも、これでもかーっとモリモリなデコ盛り部屋にもイケそうで想像力を掻き立てられる。
【Frederique Morrel】(フレデリック・モレル)フランスのファッションブランドのレーベルとして立ち上げたプロダクツメーカー。その意義あるリメークとニードルワークによるモノ作りの姿勢と豪奢でユニークな作品は、前衛趣味で名高いフランスはポンピドゥーセンター内のアートショップやファッション・セレクトショップで販売されている。日本では、代官山のゼロファーストデザインが品揃え豊富。またはオンラインストアで購入可能。
出会いはこの椅子。コルビジェのLC2とも相性よさそうで、このカウチはお気に入り。オフィスに置きたい。P.S. ゴブラン織りは昭和30年代には、もっともデパートでの贈り物に多用された進物品の代表格だった。が、頂いて最も困っちゃう悪趣味の代物でもあった。だから少年期を思い出すと、たいがいは祖父の部屋で使われていた。いらないものはみんな祖父が喜んで面白がって引き受けてくれてたので。今思えば、デカダンスなクールインテリアだったのか? お爺ちゃんの部屋は。笑。
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