ボサノバとの出会いは、晩生でジャズに目覚めた高校時代の1970年、吉祥寺のファンキーで聴いたスタン・ゲッツの「ゲッツ/ジルベルト」イパネマの娘だった。"The Girl from Ipanema"とは、なんとも素敵な初恋みたい曲名だけれど、当時は実験的な前衛ジャズと後のクロスオーバーの胎動期で、今でいうカフェ・ミュージックなんて平和な気分のラウンジ時代じゃない。ダークでディープでラジカルな戦闘的時代。だから、このレコードで、当時ジョアンの妻だったアストラッド・ジルベルトが「イパネマの娘」「コルコヴァード」2曲のボーカルを担当し、これが、アストラッドの歌手デビューであったとか、本作がビルボード誌のアルバム・チャートで2位の大ヒットだったとか、「イパネマの娘」もシングルで全米5位にランクインしたとか、果ては、グラミー賞でアルバムが3部門(最優秀アルバム賞、最優秀インストゥルメンタル・ジャズ・パフォーマンス賞、最優秀エンジニア賞)を受賞し「イパネマの娘」が最優秀レコード賞を受賞したなんて、まったく馬の耳に念仏。もっとも70年代初頭は、ボサノバも大ブームが過ぎ去り低迷期だったようだけど。だから、僕は大学を卒業するまで、ボサノバの風のような心地よさを知らないまま育ってしまった。
大学を出て、自分で初めて飼った犬が、ワイヤーへアード・フォックス・テリアのゲッツ君。かのスタン・ゲッツが名の由来。MP3なんかない時代。昼下がりの街ドライブ用に、彼女と南の島に行くっちゃー、もうカセットテープに録音録音。妄想したシチュエーション別に、オリジナルコンピレーション・カセットデープを作る作る。そんな1980年を迎えられたのは、学園闘争の時代が過ぎ去り、1冊の雑誌「Maid in U.S.A.」から届けられたウェストコーストの風が吹き始めたからだった。...つづく...
My First 犬. GETS君
1980年。25歳で初めて買ったマンションを全面改装して住み始めた最初の同居人ゲッツ。ありし日のオスマシ。
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