2009/11/02

雪がふる贅沢



郷里ではとうとう雪が積もってタイヤ交換を済ませたと、北海道に住む彫刻家の雪便りが届いた。雪国は一晩で季節が激変する。さっきまでドライだった路面は、翌朝から数ヶ月、雪と氷の冬景色に。この極端な節目がたまらない。だらだらとメリハリのない時が過ぎゆくだけの東京にいると、緊張感あるダイナミックな季節の節目が恋しくなる。しかも始まりは激的に。終わりはゆるやかに。この緩急が人を育てる。僕の細胞には鮭のように帰巣本能が刷り込まれているのか、ニュースを聞くだけでも心躍って血が騒ぐ。身が引き締まる刺すような冷気。しんしんと降る無音の雪音。雪明かりの明るさ。雪の冷たさと暖かさ。結晶の数ほどある言葉にできない色色な白の色数と輝き。日々刻々時々刻々と違う雪の踏み具合と雪鳴り。雪はたくさんの繊細な情感と美感を教えてくれる。一冬すごせば、普通の人でさえ天才F1ドライバーのようにタイヤの感触から、今いる路面の状況を微細に感じ取れるようになるはずだ。そうでなけれな運転はできないのだから。雪が人の野生を呼び覚まし感性を研ぎすましてくれる。この冬を知れば、春の夏の秋の意味を知る。雪は人にとって最も贅沢品なのかもしれない。何せ陸の王者マンモスさえ倒したアイスエイジを、裸の人はサバイブして今があるのだから。「冬が嫌い」「寒いのダメ」をよく聞くけれど、何と貧乏臭いのか。贅を知らない事なのか。あぁーもったいない。脳は南では鍛えられない。智は南では育たない。脳を鎮め智を冷ます。南はホリデーなのだから。毎朝、真新しい白いシーツに変えられるホテルのように、朝起きると真新しい白一面。雪がふるはこの上ない贅沢なのにネ。

Seiser Alm Urthaler, Compatsch 49, 39040 Alpe di Siusi/Seiser Alm, South Tyrol, Italy

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