って、人は何気に別れ際に言う。もう小さい頃からこの歳になるまで深く考えもせず、すっかり挨拶語になってしまっている「気をつけてね」。たぶん家庭から、学校でも、社会人になっても、広く世間で普通に使われているからだろう。しかも、日本のみならず世界中で大昔から、みな普通に「気をつけてね」っと言い続けている。さて。はて。人は何故、そう言い続けて来たのだろう? そもそも「気をつける」って「何を気をつけるんだ?」。別れた後、車に跳ねられないように?車の運転を誤って事故に遭わないように?ひったくり、暴漢、痴漢、誘拐、拉致に遭わないように? その昔なら、馬車で機関車で蒸気船で地球を旅してたわけだから、別れた後、帰るっていっても何週間も場合によっちゃ何ヶ月もかかった。その間、食あたり食中毒、怪我、病気、伝染病、盗賊、海賊、戦争、動乱、革命、さまざまなトラブルから身を守り安全に帰ってねっつー意味が願いが込められているように思うのだが。つまり「病気になるな!」「事故に遭うな!」「怪我するな!」って事。言い換えれば、いかなる困難、不慮の事態に遭遇しても「無事たどり着けよ!」決して旅の途中で「死ぬなよ!」「生き抜けよ!」って、みな言い続けて来たことになる。人はいつの時代も生の不条理「一寸先は闇」を知り「一期一会」を大切にして来たんだろう。そして「生きる」「生き抜く」が、この世に生ある者の最上位の価値として。
ジョン・アーヴィング原作の『ガープの世界』The World According to Garp 1982 は好きな映画の1本だ。彼の『ホテル・ニューハンプシャー』1984 も同様に、作品は居合わせた時代背景の理不尽な人生のあやに翻弄される主人公たちが、その重い切ない事件の数々をファニーにユニークに切り抜けるリアルな世界のファンタジーのような不思議な世界。共に25〜6だったか80年代初期の公開時にリアルタイムで観た映画で、今観ても新鮮な発見と感動がある不朽の名作。その『ガープの世界』の中で、主人公ガープ役のロビン・ウィリアムスが、幼少の頃、午後の浜辺で無心に遊んでいたら、遠く後ろから母親(グレン・クローズ)が「引き潮に気をつけてー!」と声をかける。それから20年。ガープが同じ浜辺で水遊びする自分の息子の背に向かって「引き潮に気をつけてー!」と叫んだ瞬間、息子の背がかつての自分と重なるシーンが好きだった。人は生き抜く知恵「先人の教え」を知らぬ間に繰り返しているんだ。
『ガープの世界』The World According to Garp 1982
地球誕生から46億年。生命誕生から40億年。人類誕生から400万年。あらゆる生命の進化の過程で、サルとヒトを分つ人間の証明「火の使用」「道具の使用」「言葉の使用」。その言葉の使用も、話し言葉の起源は5〜6万年前から、書き読み言葉の起源は5〜6千年前からと、つい最近手にした手段だ。以来、人はズーットズーット言い伝えて来た「気をつけてね」「死ぬなよ」「生き抜けよ」と。400万年生き続けた生ある人を証明する究極の一言を無意識にネ。じゃぁー 気をつけてね!
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