2009/11/14

ボグナー(独)とマーロ(伊)と007(英)



ここんとこの北海道からの初雪頼りから、すっかり忘れていたスキーを勢い思い出していた矢先、気温もぐっと下がった金曜の夜、夏物から冬物へとクローゼットの入れ替えをしていたら、お気に入りの「マーロ」のセーターが出て来たので、そう言えば「ボグナー」はどこだろうと探し始めて、再びスキー気分が盛り上がってしまった。

母親がスキー選手だったことからか、大学時代はスキー部で半年は雪の上にいた30年前、ハイ・エンドな「ボグナー」のスキーウェアは、ゲレンデでもアフタースキーでも、スキー上手なお洒落さんたちのステータスだった。当時のスキーウエアは、今のようにスポーツウェアがストリートな街着になる遙か以前、ファッションというよりは、いかにもスキーウェアって感じの運動着。だから「ボクナー」の防水加工されたストレッチ素材の太うねコーデュロイのパンツなんて、スキーパンツらしからぬ街着風で、格段にスキーお洒落の上級者仕様。さらに大学を出て就職した先が、百貨店だったこともあって、店内のボグナーショップで、ずいぶんとセールや社員価格でお世話になった。

輸入車は芝浦のヤナセ。舶来品なら銀座のサンモトヤマ。メルセデスジャパンも、ルイ・ビトン・ジャパンも登場する遥か以前は、メルセデスは勿論だがワーゲンさえ、ひとクラス上の車。グッチもビトンもフェンディーも、サンモトヤマが輸入販売をしていた時代は、いわゆるブランドものは優雅なお買い物品で、物にも店にも敷居が高い格があった。この20年、車も服も資本と商売のグローバル化が進み、欧州のメーカーは、軒並み日本法人を設立してダイレクト出店の時代。ポピュラーになる事は否定しないが、あの品格あった時代が買い手としては懐かしくなってしまう。小学生時代に観た、加山雄三の『銀座の若大将』(1962)『アルプスの若大将』(1966)『ニュージーランドの若大将』(1969)や、ショーン・コネリーのボンドシリーズ『女王陛下の007』(1969)、オードリー・ヘップバーンの『シャレード』(1963)で、魅せられたアルプスでの優雅なスキー&ライフ。

あらゆる価値と規範がボーダレスに融解する時代の趨勢に、あえてアンチを唱えれば、大人と子供、ハイブローとポピュラー、クラス(垣根)は振る舞いや品格を学ぶ上で必要なのではないだろうか? 何て思ったりもする。日用品としてのユニクロのカシミヤもいいが、カシミヤといえば「マーロ」(伊)だとか、スキーウェアといえば「ボグナー」(独)だとか、アルプスの峰峰と欧州のクラス社会が育んだ、由緒ある老舗の芸技としきたり&現代に受け継がれたセンスもまた、教養を深める上で必要なのでは。ナーンってね。そうすりゃ、加山雄三の「若大将シリーズ」も、ショーン・コネリーの「007シリーズ」も、オードリー・ヘップバーンの「シャレード」も、発見がいっぱいあって美味しいはずですよー。

アイガー、メンヒ、ユウングフラウを一望する「女王陛下の007」のロケ地、シルトホルン・ピッツ・グロリア(Schilthorn Piz Gloria)には名物メニュー「ジェームス・ボンドの朝食」がある。

Bogner(独)1932年創業

ボグナー】Bogner(独)自ら冬期オリンピックに2度も出場したスキーヤーでもあったウイリー・ボグナーによって1932年、ドイツ、ミューヘンに設立。ボクナーはスキーを楽しむのみならず、スキー映画にも情熱を注ぎ、ショーン・コネリーの「007シリーズ」4作の撮影にも関わり、生涯で40本のスキー映画を製作した事でも有名。カメラワークでは受賞作多数の経歴の持ち主。創業以来、ドイツナショナルチームのスキーウェアを担当して今現在に至る。古くは、マリリン・モンロー、イングリッド・バーグマン、などのハリウッドスターが愛用した事でも有名で、50年代後期から60年代にかけてハリウッド映画のスキーシーンには欠かせないスキーウェアだった。

マーロ】malo(伊)1970年、フィレンツェにて現バランタイン(1921年創業)を率いるアルフレッド・カネッサ(Alfredo Canessa)が、スコットランド製のニットが全盛であったこの時代に、色目にこだわったイタリア製カシミアニット作りを目的としてフィレンツェ郊外に創業。以来、カシミヤニットといえばバランタイン・カシミヤと並び世界最高峰と名高い。中でもカシミヤ扱いの職人芸とカラーリングは世界一と評される。エルメスのカシミヤ・ニット製品は、すべてマーロが作る事でも、その品質の高さは折り紙付きだ。

P.S. 1978年、カシミヤ専門のラインとして創業した ブルネロ・クチネリ(BRUNELLO CUCINELLI)は、デザインもプライスもスノッブな今様貴族趣味で頼もしい。

2 件のコメント:

yuko さんのコメント...

本格的な冬を目前に控え、毎朝目を通す新聞には「スキー人口の減少」。
それに伴いゲレンデ同士でリフト券連携して人口低迷下での安定をなんとか計りたいとする地域もあるらしく。
北海道のゲレンデでは実はまだ滑った事の無い私。とはいえ初級者、10年以上もスキーをしていないのですが。遠のいたきっかけはスノボとスキーとの並走滑走ゲレンデが増えてしまった事からかも。
昨年まで住んでいた雪質最高の町でもナイターの光が見えるところに住んでいながらも、結局行けずじまい。
最後のスキーは尾瀬方面。スキーヤーオンリーのゲレンデでしたが、時は10年前。今はどうだか。
どうぞスキー人口を増やしてくださいませ。はにかみ王子がギャルゴルフ人口を増やしたごとく。

stimuli さんのコメント...

yukoさん!忍者ですね。いつの間にコメントを。もう30年前から日本人は絶滅危惧種。死滅種に向かうレッドリスト入りですから、スキー人口も増えようもないですが。ちょうど10年前の半分のようですね。長年のライバル、西武と東急も共同で市場開拓するようですし。

まー万事が、草食男子と森ガールに象徴される、安全保育器の中で、もはやタブーのない選択の自由だけが無尽蔵に拡大する社会、アンチもパンクも必要なく、みんなプチ芸術家ですから、タフな生存の野趣も退化して当然。これも不可逆。

エクストリームやスノボじゃない、貴族趣味なスキー男子のスター誕生か、海外セレブガールがニセコにでも、スター建築家のロッジを建てて、jetsな暮しゴージャスなスキーリゾートを世界に配信して頂くとか。これは30 年前からの持論ですが、ウィンタースポーツの為の御養邸をニセコに造るとか。ノーブルなロイヤルが必要です。「女王陛下の007」ですよ。

 
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