先日、横浜ベイシェラトンホテルのベイビューラウンジで高橋奈保子という若いジャスボーカリストを耳にした。今時のスレンダーな娘さんが歌うジャズ。そのふつうっぽい新鮮さと趣きのある佇まいにすっかり気を取られてしまい話はそっちのけ。フレッシュな歌声に酔わされながら、20代前半、夜な夜な通った六本木のアビーや薄野のスピークローが蘇り、眠っていたイフが目覚めてしまった。彼女のウェブを見ると、赤坂のカナユニやケイ、六本木IZUMI、新宿のオクリーズにホテルのラウンジと、毎夜、大人の夜遊び空間を掛け持ちで歌う売れっ子さんだ。周辺の音楽系20代といえば、FMやMTVと繋がったタトゥーが自慢げなクラブDJ嬢にキラキラなアゲハ系DJ嬢全盛。企業も店もイベントといえば、そんなDJを入れるのが当然顔のトレンドだ。そんなシャカシャカDJ女子と音楽シーンじゃ〜こちらの情報不足だろうが、もはやクラシックのようなジャズに出会い、きっちり渡米までして歌を磨く女子たちが、都内のバーやレストランで爽やかに生業を立ててる東京の懐とジャズの魅力に、ちょっと感動ってわけで、イフが深い深い眠りから起きちゃったってわけ。
イフの誘惑は1989年「恋のゆくえ」The Fabulous Baker Boys だった。テレビやコンサート、ヒットチャートで騒がれるミュージシャンも快感だろうけれど、人知れず夜の街のナイトクラブやホテルのラウンジを回るピアニストやシンガーの、その日暮らしがジャストミート。体一つ芸一つの身軽な人生。地元で時に地方の店回り。もっとも楽器も歌も、からっきしダメじゃー話にならないけれど、唯一、同行する現場マネージャーは天職じゃないかしらんと。日ごろ、人様の強欲・個略を満たす都市やビルや住宅のプレゼンをし、企業や個人のブランディングを遂行したりの生業。企画や資源や才能を上手に売り込む商売、売り込みのプロ。ただ、小説家が命を削り言霊を紡ぐように根拠ある理詰めの企画書を描き上げるエネルギーと実現までの途方もないコミュニケーションに、クライアントの我がままを説き伏せるファイトの長丁場には、ほとほと精根尽き果てる、敵との己との戦いの連続。オファーを受け、ネゴシエーションしてブック&スケジュールの管理をしてはチケット片手に飛行機に飛び乗り現場を仕切りながらの旅人生って、365日がライブなドライブ。あぁ〜人生の浮気心〜。その場で終わる日々の連続。まるでホテルだ。いつも真新しい白いシーツから始るしがらみのない今日の連続。ホテル暮らしで生涯終えたいって夢と繋がった。
映画は、少年のころ天才ピアニスト兄弟と鳴らしたフランク(ボー・ブリッジス)とジャック(ジェフ・ブリッジス)が、プロのピアノデュオとなるも鳴かず飛ばず。兄の風貌と弟の性格なのか、現実妥協の兄と弟の秘めた才能との確執なのか、しけたクラブやバーを掛け持ちで何とか生計を立てる15年。果ては、そのしけたクラブからも仕事の打ち切り。ピアノデュオにこだわってきた二人も、ついに生き残りを賭けた苦肉の策に女性ヴォーカリストを入れたトリオに踏み切る。野心を象徴するかのチープとゴージャスが同居する芸名のスージー・ダイヤモンド(ミシェル・ファイファー)のメンバー入りから、ドラマはその後の3人の人生を変えて行く。3人が心に閉じ込めてきた本当の自分が眠りから覚めて。兄弟愛。才能と現実。踏み出す勇気。封印してきた自分との葛藤がキャンドルの灯りのように往還する秀逸なラブストリー。(写真上は人気に火が着き出した3人が、初めて高級リゾートホテルからのオファーでやって来たニューイヤーイブのライブツアーの一コマ)
フォーシーズンズホテル椿山荘東京では楽屋もラグジュアリー
2001年、縁あってジプシー・スイングジャズ界の新星「ロビン・ロラン・トリオ」の初来日初ライブツアーのプロデュースを担当した。東京はフォーシーズンズホテル椿山荘のアゴ&マクラを確保して青山のロジャックでライブ。JALで飛んで札幌は、グランドホテル、パークホテルのアゴ&マクラ。さらに主催者のカフェ、ホテル、ショッピングセンターでのライブ巡り。毎夜、〆は宿泊ホテルのバーラウンジ。テレビに新聞とメディア対応をこなしホテル主宰の打ち上げで10日間の旅を終えた。何て楽しい旅な事か。彼らRNTは、アムステルダムの路上演奏をホームとするアーティスト。故ハリソン・フォードに、その路上で見初められ、リチャード・ギア&ウィノラ・ライダーの異色作「オータム・イン・ニューヨーク」、ジュリエット・ビノッシュ&ジョニー・デップの話題作「ショコラ」などのサントラを担当した、その筋では気鋭のギタリスト。リーダーのロビンは兄貴という立場もあってかとにかく真面目。ホテルのショーが開く直前まで、ステージの袖で僕に日本語の質問ばかり。その熱心さはきっちり会場のお客を沸かす芸人魂。その時、あぁー彼らと一緒に世界中を旅したいと、人生のイフがもたげた次第。その後、ハリーポッターの原画家ダン・シュレシンジャーの国内プロモーションツアー。サンフランのデジタルクイーン、エイミー・フランチェスチー二の初来日に1月関わるご縁に続くのだが。。。
長い夏休みのような人生も、運が良くて残り時間もあと20年。未だ見果てぬ夢は志半ば。「シブヤ3109年」という1000年後の東京を世にプレゼンしたいと小僧のような奮闘の日々が続く。焦る宿題の山。我が才能に惚れて苦難の長旅を連れ添うパートナーにも、夢想を引き受けてくれる専制君主のような歴史的才覚のクライアントにも巡り会わず。よもや未完で終わるのか。つくづく未来の魅惑の才能に出逢うたびに人生のイフがもたげてしまう。不朽の名作「男と女」のリメイク版「男と女 アナザー・ストーリー」And Now... Ladies and Gentlemen...(2002)のパトリシア・カースのように、船上でリゾートホテルのナイトプールで歌う日々の裏方冥利に心揺らぐ。昨夜のセレブリティークルーズから届いたメールニュースにイフの誘惑に襲われちゃった、お隣の国立競技場が石原雄二郎ファンで賑やかだった日曜日の夜なり。うわぁー 船上のラウンジで、ナイトプールで歌いながら、世界を一周し続けるトラベラー。憧れちゃいます。人生の観光客「ツーリスト」なんかじゃない人生の旅人「トラベラー」にネ。ミューラーさんみたく!チャンチャン♪
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