綿雲。積乱雲。急な雨上がりの午後、雲間がサーッと幕を開けて見渡す空舞台はきらきらのスカイブルー。そんな夏休みの西日が肌を刺し、産毛もブロンドに染める夕暮れ前。草の香りがむせ返り木漏れ日がゆれる木陰で、僕はメロンソーダを飲みたくなる。そんな夢想がもくもくと立ちのぼる、ひとり小部屋にいると、いつも高校時代の下宿部屋と「雨の訪問者」が思い出される。センチメンタル・アフター・ザ・レイン。
Afternoon sentimental after the rain
1972年。17才で見た「雨の訪問者」は刺激的だった。タブーをゲバルトに壊す70's そのもので。南仏の保養地コートダジュールの午後のひと雨。メランコリーから付けられたメリーは窓越しに爪をかむボーイッシュなショートヘアのそばかす顔。クレージュの白いエナメルのミニを装う彼女は出張から帰る夫を待つ身を持て余し、アル中の母が営むレーシングカーコースのあるボーリング場から帰宅する。無人のバスが停留所に止まり、去った後には赤いTWAのフライトバックを持つ男。フランスのリゾート地で乗る彼女のシボレー・インパラ(ステーションワゴン)。TWAにステーションワゴン。共に南仏には似つかわしくないアメリカ。そして起こるレイプ。殺人。死体遺棄。「太陽がいっぱい」を撮り上げた名匠ルネ・クレマンらしい、大人になりきれないメランコリックな乙女心が雨上がりに香り立つシルバーブルーのサスペンス。
それにしても映画の中の車検索サイト IMCDB(Internet Movie Cars Datebase)はスゴイ!映画の冒頭に映るレーシングカーシーンまでキッチリ押さえてる呆れた車オタク!
(youtubeで すべてがわかる事の始まり冒頭の5分ご堪能あれ)
刑事役のチャールズ・ブロンソンの胸板。そばかす顔のマリレーヌ・ジュベール。スキンヘッドにベージュのコートとTWAの赤いバッグ。そして、フランシス・レイのサンウンド・トラック。7月の最終土曜日の午後。「雨の訪問者」にセンチメンタル。
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